結論:屋内貯蔵所は倍数150以上、屋外貯蔵所は倍数100以上で定期点検の対象になる
結論から言うと、屋内貯蔵所は指定数量の倍数が150以上、屋外貯蔵所は指定数量の倍数が100以上になった時点で、消防法上の定期点検の対象施設になります(危険物の規制に関する政令7条の3第二号・第四号)。対象になった場合、1年に1回以上の定期点検(危険物の規制に関する規則62条の4)を行い、その記録を3年間保存する義務(規則62条の8第五号)が生じます。
倍数がこの基準に届いていない屋内貯蔵所・屋外貯蔵所は定期点検の対象ではありませんが、「うちは倍数が低いから関係ない」と思い込んだまま増設や危険物の追加で倍数が基準を超えていた、というケースは珍しくありません。この記事では、屋内貯蔵所・屋外貯蔵所を持つ事業者の危険物保安監督者・総務担当者に向けて、対象になる条件・点検事項・記録の保存年数・実務での確認手順を、根拠条文つきで整理します。
屋内貯蔵所・屋外貯蔵所が定期点検の対象になる条件
定期点検(施設が技術上の基準に適合しているかを定期に自ら点検すること)は消防法14条の3の2に根拠があり、「政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は…定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない」と定めています(消防法14条の3の2)。
この「政令で定める」対象施設は、政令8条の5柱書により「政令7条の3に規定する製造所等(大規模な移送取扱所を除く)」+「政令8条の5各号に掲げる施設」と定義されます(危険物の規制に関する政令8条の5)。屋内貯蔵所・屋外貯蔵所は政令7条の3側に該当し、条件は以下のとおりです。
- 屋内貯蔵所:指定数量の倍数が150以上(政令7条の3第二号)
- 屋外貯蔵所:指定数量の倍数が100以上(政令7条の3第四号)
指定数量の倍数とは、貯蔵・取り扱う危険物の数量を、その危険物の類・品名ごとに政令で定められた指定数量で割り、合計した値です。たとえば指定数量200リットルの第四類危険物(ガソリンなど)だけを貯蔵する屋内貯蔵所であれば、200×150=30,000(単位リットル、30キロリットル)以上を貯蔵する能力があると倍数150に達し、定期点検の対象になります。屋外貯蔵所で指定数量1,000リットルの危険物(灯油など)を貯蔵する場合は、1,000×100=100,000(単位リットル、100キロリットル)が倍数100の分かれ目です。実際の倍数は、複数の危険物を貯蔵している場合はそれぞれ「数量÷指定数量」を計算して合算するため、正確な数値は許可申請書や台帳で確認する必要があります。
他の施設区分と比べると、倍数の基準が施設ごとに異なることがわかります。
| 施設区分 | 定期点検の対象になる条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 製造所 | 指定数量の倍数10以上 | 政令7条の3第一号 |
| 屋内貯蔵所 | 指定数量の倍数150以上 | 政令7条の3第二号 |
| 屋外タンク貯蔵所 | 指定数量の倍数200以上 | 政令7条の3第三号 |
| 屋外貯蔵所 | 指定数量の倍数100以上 | 政令7条の3第四号 |
| 一般取扱所 | 指定数量の倍数10以上(詰替えの一部除外あり) | 政令7条の3第六号 |
| 地下タンク貯蔵所・移動タンク貯蔵所・地下タンクを有する給油取扱所等 | 倍数を問わず対象 | 政令8条の5第一号〜第五号 |
なお、鉱山保安法の保安規程又は火薬類取締法の危害予防規程を定めている製造所等は、区分にかかわらず定期点検の対象から除かれます(規則9条の2)。該当する可能性がある施設は、この除外に当たるかどうかも合わせて確認してください。
定期点検チェッカーを使うと、施設区分と条件を入力するだけで、自社の施設が定期点検の対象かどうかを一次的に確認できます。倍数の計算に不安がある場合の目安として活用してください。
屋内貯蔵所・屋外貯蔵所で点検すべき事項と周期
対象になった屋内貯蔵所・屋外貯蔵所は、規則62条の4に基づき1年に1回以上、施設が消防法10条4項の技術上の基準に適合しているかを点検します。具体的な点検事項は施設の許可内容によって異なりますが、一般的には次のような項目が含まれます。
- 建築物・工作物の構造(壁・床・屋根の損傷や腐食の有無)
- 採光・照明・換気・排出設備の作動状況
- 消火設備・警報設備の設置状況と作動確認
- 保有空地(延焼防止のための空地)が確保されているか
- 標識・掲示板の表示内容が現況と一致しているか
屋内貯蔵所・屋外貯蔵所自体には、屋外タンク貯蔵所の内部点検(規則62条の5)や地下タンクの漏れの点検(規則62条の5の2)のような、施設区分に固有の追加点検は原則としてありません。ただし、施設が地盤面下に配管を有している場合は、施設の区分を問わず「地下埋設配管の漏れの点検」(規則62条の5の3)が別途必要になるため、自社の施設に地下埋設配管があるかどうかは確認しておく必要があります。この漏れの点検の記録は3年保存です(規則62条の8第三号)。
自社で確認・対応する手順
- 許可申請書・台帳で指定数量の倍数を確認する:屋内貯蔵所は150、屋外貯蔵所は100が基準です。危険物の種類や数量を変更した場合は、その都度倍数を計算し直してください。
- 対象になる場合は点検計画を立てる:前回の定期点検実施日を起点に、1年後の同月末までを次回期限として管理します。
- 点検を実施し、点検記録を作成する:点検した設備・方法・結果・実施者を記録します。全国危険物安全協会(zenkikyo.or.jp)が定期点検記録表の様式を公開しているので、様式に迷う場合の参考になります。
- 記録を3年間保存する:直近の点検記録に加え、過去2回分(合計3回分)の記録を保持している状態が、年1回点検・3年保存の組み合わせでは常に維持すべき最低ラインになります。
- 地下埋設配管の有無を確認する:ある場合は、定期点検とは別に漏れの点検(周期・保存年数とも別枠)の管理が必要です。
定期点検チェッカーで自社の施設情報を入力すれば、次回の点検期限や記録の保存年数の目安を確認できます。点検記録や施設ごとの期限をクラウドで一元管理したい場合は、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で本サービスを試すこともできます。
注意点・誤解しやすいポイント
- 「屋内貯蔵所」と「屋内タンク貯蔵所」は別物:屋内貯蔵所(容器で危険物を貯蔵する施設)は倍数150以上で定期点検の対象になりますが、屋内タンク貯蔵所(建築物内にタンクを設置する施設)は政令7条の3・8条の5のいずれの号にも掲げられておらず、定期点検の義務はありません。名称が似ているため混同しないよう注意が必要です。
- 定期点検と保安検査は別制度:定期点検は施設の所有者等が自ら行うものですが、一定規模以上の屋外タンク貯蔵所などには市町村長等が行う「保安に関する検査」(消防法14条の3・政令8条の4)が別途あります。屋内貯蔵所・屋外貯蔵所は保安検査の対象にはなりませんが、両者を混同した記事や説明も見られるため注意してください。
- 保存年数は施設・点検種別によって異なる:屋内貯蔵所・屋外貯蔵所の定期点検記録は3年保存(規則62条の8第五号)ですが、地下埋設配管の漏れの点検記録も同じく3年(第三号)、移動貯蔵タンクの漏れの点検記録は10年(第四号)、屋外タンク貯蔵所の内部点検記録は26年または30年(第一号)と、点検の種類ごとに年数が異なります。「点検記録は一律3年」と思い込むと、複数の点検を抱える施設で保存漏れが起きかねません。
- 記録の不備には罰則がある:点検記録の不作成・虚偽作成・不保存は消防法44条第五号により30万円以下の罰金又は拘留の対象です。点検そのものを行っていない場合は、使用停止命令(消防法12条の2)の対象にもなり得ます。
定期点検の対象や点検事項の詳細は、施設の許可内容によって異なる部分があるため、最終的には所轄の消防本部にご確認ください。
まとめ
- 屋内貯蔵所は指定数量の倍数150以上、屋外貯蔵所は倍数100以上で定期点検の対象になる(政令7条の3第二号・第四号)
- 対象施設は1年に1回以上の定期点検が必要で、記録は3年間保存する(規則62条の4・62条の8第五号)
- 屋内貯蔵所と屋内タンク貯蔵所は別の施設区分であり、後者に定期点検の義務はない
- 地盤面下に配管がある場合は、施設区分を問わず別枠で「地下埋設配管の漏れの点検」(3年保存)が必要
- 自社の倍数や点検期限が不明な場合は、定期点検チェッカーで一次確認し、最終判断は所轄消防本部に確認する
よくある質問
Q. 屋内貯蔵所・屋外貯蔵所の指定数量の倍数はどこで確認できますか。
危険物施設の設置許可申請書(消防法11条に基づく許可の際に所轄消防に提出した書類)に記載されています。手元にない場合は、所轄消防本部の予防課(危険物担当)に問い合わせれば、許可内容の写しを確認できる場合があります。
Q. 倍数が基準未満でも点検はしたほうがよいですか。
法律上の定期点検義務は生じませんが、施設の劣化や設備の不具合は倍数にかかわらず起こり得るため、自主的な保守点検を行うこと自体は推奨されます。ただし消防法上の定期点検記録としての法的な意味合いは異なる点に留意してください。
Q. 危険物の種類や数量を変更して倍数が基準を超えた場合、いつから定期点検が必要になりますか。
倍数が政令7条の3の基準(屋内貯蔵所150、屋外貯蔵所100)に達した時点から定期点検の対象になります。変更内容によっては消防法11条の許可事項の変更手続きも必要になるため、危険物の種類・数量を変更する際は事前に所轄消防本部へ相談することをおすすめします。
Q. 屋内貯蔵所・屋外貯蔵所にも保安検査はありますか。
いいえ。保安検査(消防法14条の3・政令8条の4)の対象は一定規模以上の屋外タンク貯蔵所や移送取扱所などに限られ、屋内貯蔵所・屋外貯蔵所は対象になっていません。屋内貯蔵所・屋外貯蔵所に課されるのは定期点検(規則62条の4)のみです。
Q. 地下埋設配管の漏れの点検は屋内貯蔵所・屋外貯蔵所でも必要ですか。
施設の区分にかかわらず、地盤面下に設置された配管を有していれば必要です(規則62条の5の3)。屋内貯蔵所・屋外貯蔵所であっても、配管が地下にある場合はこの漏れの点検(記録は3年保存)を別途管理してください。