「配管の点検」と「接地(アース)の点検」、何をいつまでにやればいいのか
危険物施設の点検記録を見返していると、「配管・弁・接手」という項目と、「地下埋設配管の漏れの点検」という項目が別々に出てきて、両方とも配管の話なのに扱いが違うことに戸惑う担当者は少なくありません。さらに移動タンク貯蔵所(タンクローリー)の点検表には「接地導線(アース)」という項目もあります。この記事では、配管・接地に関する点検事項を、根拠条文とあわせて整理します。
結論:配管点検は「定期点検の一部」と「漏れの点検」の二階建て、接地は構造基準の点検事項
結論から言うと、配管に関する点検は性質の異なる2つが重なっています。1つ目は、定期点検(施設が技術上の基準に適合しているかを自ら定期に点検すること)の一部として行う配管・弁・接手の外観点検で、危険物の規制に関する規則第62条の4に基づき原則1年に1回以上実施し、記録を3年間保存します(規則62条の8第五号)。2つ目は、地盤面下に設置された配管(地下埋設配管)を有する場合に上乗せで必要になる「漏れの点検」で、規則62条の5の3に基づき原則1年に1回、完成検査から15年以内のもの又は漏えいを覚知し拡散を防止する措置があるものは3年に1回でよいとされ、記録は3年間保存します(規則62条の8第三号)。この漏れの点検は、対象施設であれば製造所・給油取扱所・地下タンク貯蔵所などの区分を問わず必要になる点が見落とされがちです。
一方、接地(アース)は周期のある「点検」というより、施設・設備が満たすべき構造基準の点検事項です。ガソリン・ベンゼンその他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物を取り扱う設備には、危険物の規制に関する政令第9条第1項第20号により静電気を有効に除去する装置を設けることが求められ、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)には同政令第15条第1項第14号により接地導線を設けることが求められています。定期点検では、これらの装置が壊れていないか、接地導線が正常に機能するかを確認します。
詳細説明:根拠条文と、施設区分別に必要な点検の違い
配管・接地に関わる点検を整理すると、次の3種類に分かれます。
| 点検の種類 | 主な対象 | 周期 | 記録の保存年数 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|---|
| 配管・弁・接手の外観点検(定期点検の一部) | 定期点検の対象施設全般 | 1年に1回以上 | 3年間 | 規則62条の4・62条の8第五号 |
| 地下埋設配管の漏れの点検 | 地盤面下に配管を有する施設(区分を問わない) | 原則1年に1回(要件を満たせば3年に1回) | 3年間 | 規則62条の5の3・62条の8第三号 |
| 静電気除去装置・接地導線の点検 | 静電気災害のおそれのある危険物を取り扱う設備、移動タンク貯蔵所 | 定期点検(1年に1回以上)に含めて実施 | 3年間 | 政令9条1項20号・政令15条1項14号・規則62条の4 |
このうち、地下埋設配管の漏れの点検が「施設区分を問わない」というのがこの記事の核です。製造所・一般取扱所・給油取扱所・屋外タンク貯蔵所・地下タンク貯蔵所・移送取扱所のいずれであっても、そもそも消防法第14条の3の2に基づく定期点検の対象施設であり、かつ地盤面下に配管を持っていれば、通常の配管外観点検とは別枠でこの漏れの点検が必要になります。定期点検の対象施設かどうかは政令8条の5・7条の3で決まり、施設によっては対象外の場合もあるため、自社がどの区分に当たるかは定期点検チェッカーで確認できます。
接地導線については、移動タンク貯蔵所の技術上の基準として、良導体の導線をビニール等の絶縁材料で被覆したものを用い、損傷なく巻き取れる装置に収納することなどが技術基準・指針で示されています。接地電極側の抵抗値の目安など、より詳細な仕様は所轄消防本部・技術指針によって案内が分かれるため、詳しくは所轄の消防本部にご確認ください。
自社で確認・対応する手順
- 施設が定期点検の対象かを確認する:政令7条の3・8条の5のいずれかに該当するかを、指定数量の倍数・地下タンクの有無から確認します。
- 配管の敷設状況を確認する:配管が地盤面下(地下埋設)にあるか、地上・建屋内にあるかを図面や現地で確認します。地下埋設配管があれば、通常の配管外観点検に加えて漏れの点検が必要です。
- 接地・静電気除去の設備を洗い出す:ガソリン等の第四類危険物を取り扱う設備の静電気除去装置、移動タンク貯蔵所の接地導線の有無と設置箇所を確認します。
- 点検事項ごとに周期・記録様式を分けて管理する:配管外観点検(1年)、漏れの点検(1年又は3年)、記録保存年数(いずれも3年)を混同しないよう、点検表の項目を分けます。自社施設に合った点検事項を確認したい方は、記録表テンプレートで施設区分を選ぶと項目の一覧を確認できます。
- 記録の保存年数を点検種別ごとに揃える:配管の外観点検・地下埋設配管の漏れの点検は3年保存ですが、移動タンク貯蔵所の漏れの点検(5年に1回)だけは記録が10年保存(規則62条の8第四号)と長いため、混同しないよう注意します。
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数字で確認する:周期が変わると、保持すべき記録の枚数も変わる
地下埋設配管の漏れの点検は記録の保存年数が3年(規則62条の8第三号)で固定されている一方、周期は完成検査からの経過年数等で1年と3年の2通りに分かれるため、常に保持しておくべき記録の枚数が周期によって変わります。周期が原則どおり1年に1回(12か月に1回)の配管であれば、保存年数3年=36か月÷周期12か月=直近3回分の記録を保持している状態が本来の姿です。一方、完成検査から15年以内、又は漏えいを覚知し拡散を防止する措置があり周期が3年に1回(36か月に1回)でよい配管では、36か月÷36か月=直近1回分の記録があれば要件を満たします。同じ「保存3年」でも、周期が1年か3年かで手元に残しておくべき枚数は3倍違うため、周期の区分を取り違えると、必要な枚数の記録が揃っていない状態に気づかないまま立入検査を迎えることになりかねません。
注意点・誤解しやすいポイント
- 配管の外観点検(定期点検の一部)と、漏れの点検を同じものだと思い込む:前者は目視・機能確認が中心の1年周期の点検、後者は加圧法・減圧法等の方法によって配管そのものの漏えいの有無を確かめる別枠の点検です。
- 地下埋設配管がなければ配管の点検自体が不要だと考える:地上配管であっても、定期点検の一部として配管・弁・接手の外観点検は必要です。不要になるのは「漏れの点検」の上乗せ分だけです。
- 接地導線は移動タンク貯蔵所だけの話だと考える:静電気除去装置の設置義務(政令9条1項20号)は、ガソリン・ベンゼン等静電気災害のおそれのある危険物を取り扱う設備全般に及びます。
- 漏れの点検の記録保存年数を定期点検と同じ感覚で捉える:地下埋設配管の漏れの点検記録は3年ですが、移動タンク貯蔵所の漏れの点検記録だけは10年(規則62条の8第四号)です。定期点検の対象や点検事項の詳細は、所轄の消防本部にご確認ください。
まとめ
- 配管の点検には、定期点検の一部としての外観点検(1年に1回・記録3年)と、地下埋設配管がある場合に上乗せで必要な漏れの点検(1年又は3年に1回・記録3年)の2種類がある
- 地下埋設配管の漏れの点検(規則62条の5の3)は、対象施設であれば施設区分を問わず必要になる
- 接地(アース)は、静電気除去装置(政令9条1項20号)・移動タンク貯蔵所の接地導線(政令15条1項14号)として、定期点検の中で機能を確認する
- 漏れの点検の周期は完成検査からの経過年数・漏えい検知措置の有無で1年と3年に分かれる
- 移動タンク貯蔵所の漏れの点検記録だけは10年保存で、他の3年保存の記録と混同しないよう注意する
自社の施設区分に応じた配管・接地の点検事項を具体的に確認したい方は、記録表テンプレートで点検事項の一覧を作成してみてください。
よくある質問
Q. 地上配管しかない施設でも、配管の点検は必要ですか?
必要です。地下埋設配管がある場合に上乗せで必要になるのは「漏れの点検」(規則62条の5の3)であり、配管・弁・接手の外観を確認する点検自体は、定期点検(規則62条の4)の一部として地上配管でも実施します。
Q. 接地導線(アース)が壊れていた場合、どの点検の指摘になりますか?
移動タンク貯蔵所の接地導線は政令第15条第1項第14号に基づく構造基準の設備であり、定期点検(規則62条の4)でその機能を確認します。破損・欠落は技術上の基準への不適合として指摘の対象になり得ます。
Q. 地下埋設配管の漏れの点検は、どんな施設区分でも必要ですか?
定期点検の対象施設であり、かつ地盤面下に配管を有していれば、製造所・給油取扱所・地下タンク貯蔵所などの区分を問わず必要です(規則62条の5の3)。自社が定期点検の対象施設に当たるかどうかは、政令7条の3・8条の5の基準で個別に確認する必要があります。
Q. 漏れの点検の周期が1年になるか3年になるかは、誰が判断するのですか?
完成検査からの経過年数、及び漏えいを覚知し拡散を防止する措置の有無で決まります(規則62条の5の2・62条の5の3)。自社の配管がどちらに当たるかの判断に迷う場合は、詳しくは所轄の消防本部にご確認ください。
Q. 静電気除去装置の点検に、決まった点検方法はありますか?
政令第9条第1項第20号は装置の設置を義務付けていますが、具体的な点検方法・頻度の細目までは条文上一律に定められていない部分があります。設備の仕様や運用の細目については、所轄の消防本部にご確認ください。